平成28年(2016年)6月3日に「特定商取引に関する法律の一部を改正する法律」(平成28年法律第60号)が公布され、平成29年(2017年)12月1日から施行されました。(2020年4月現在も施行中です)
これにより、ファクシミリ広告(いわゆるFAXDM)の一部がこの法律の適用範囲内となりました。
今回はこの改正により、FAXDMにどのような影響があるのか、どのような対策をすればよいのかをまとめたものをご紹介いたします。
特定商取引法とは
「特定商取引に関する法律」は、「特定商取引法」または「特商法」とも呼ばれます。
事業者と消費者との間でトラブルが生じやすい訪問販売や通信販売などの取引において、事業者による違法で悪質な営業行為などを防止することで消費者を保護し、安心して商品やサービスを購入できるように市場が適正化されることを目的とした法律です。
ここで言う消費者は「個人」のことを指しています。”営業のために若しくは営業として締結するもの”…つまり相手が事業者(企業)である場合の営業に関しては適用の対象外としています(同法26条1項)。つまり特定商取引法は、対法人(to B)ではなく対個人(to C)の営業について規制しているものなのです。
どのように改正されたのか
先述の改正において、FAXDMに関してどのような規制がおこなわれたのかを簡潔にまとめました。
規制1:相手からの請求または承諾が無い状況でFAXDMを送ることが禁止されました。(オプトイン規制)
電子メール広告においては既に、送信する前にあらかじめ相手の許可を得ることが義務づけられ(オプトイン規制)、許可を得ていない電子メール広告の送信は原則として禁止となっています。それが、今回の改正によりFAXDMの一部にも適用されることとなりました。
ここで注意したいのが、全てのFAXDMがオプトイン規制の対象となっているわけではないということです。
先述の通り、「営業のために若しくは営業として締結するもの」=いわゆる対事業者への営業は特定商取引法の適用対象外であるため、相手が個人消費者でない場合は事前の許可を得る必要はありません。
個人消費者へFAXDMを配信したい場合は、事前に承諾を得る必要があります。その場合、FAXDMが今後送られるという事実を相手が認識できるようにわかりやすく伝えた上で承諾を得なければなりません。
規制2:相手からの請求または承諾を得てFAXDMを送る場合は、相手から請求または承諾があったという事実についての記録を作成し、1年間保存することが義務づけられました。
個人消費者宛てにFAXを送るにあたって、請求や承諾を得られた場合は、その事実を所定の方法にて記録を作成し、1年間保存する必要があります。
規制3:FAXDMを送る際は、相手が今後FAXDMの提供を受けない旨を意思表示できる手段を原稿内に表示することが義務づけられました。
FAXDMを送る際には、相手がいつでもFAXDMの停止依頼ができるように原稿内に停止希望欄を設置する必要があります。
また、その停止依頼はFAXで受けつけることが義務づけられています。つまり、「FAXを停止したい場合は郵送・メール・電話で連絡してください」といった形は認められません。
停止依頼を受け付けた後は、停止依頼に個別の条件を指定していない場合(例:○月○日まではFAX停止、○○の商品に関してのFAXは停止等)は、いかなる場合もFAXDMを送付してはいけません。
結局、FAXDMは送ってもよいのか
結論から言えば、「特定商取引法」は個人消費者を保護する法律であるため、事業者間(企業対企業・BtoB)でのFAXDMに関しては規制をしていません。つまり、現時点(平成30年9月時点)では、企業を対象にしているFAXDMであれば、今までどおり事前の請求や許可を得ずとも配信することが可能です。
しかし、規制されていないからといって何をしてもいいわけではありません。常軌を逸したような頻度やボリュームのFAXDMを送りつけることは迷惑以外の何物でもありませんし、マナーを守った上でFAXDMを実施するよう心がけてください。これはFAXDMに限らずあらゆる営業活動に当てはまることです。
FAXDMを実施するにあたって気をつけるべき事項
1. FAXDMの配信を停止(拒否)する方法を原稿内に必ず明記する
2. FAXDMの配信停止依頼があった送付先には、以降配信がおこなわれないように徹底する
3. 送信者である自身(自社)の情報を、原稿内に必ず明記する(社名・住所・FAX番号・電話番号など)
4. 個人消費者に配信する場合は、あらかじめ承諾を得て、その事実が確認できるように記録を作成した上で配信する
もし、クレームの際に法律について指摘されたら?
万が一、クレームを受けた際に「FAXDMは違法になったんじゃないの?」等と尋ねられた場合は、相手が事業者である場合は、ガイドラインに従って適正にFAXDMを配信しているという旨を伝えて問題ございません。
しかし、相手は送られて迷惑を被っているわけですから、そちらに関してはまずは真摯に謝罪し、今後配信をおこなわない旨を伝え、FAX番号など停止に必要な情報を伺うようにしてください。
FAXDMはダイレクトアプローチの手段として依然として有効なものです。
正しく活用することで、FAXDMそのものの健全化を図り、今まで以上にクリーンな営業活動をおこなっていきましょう。